研究職時代を振り返って

はじめに

今回は、私の研究所時代の経験について振り返ってみたいと思います。理系の大学院を卒業し、希望していた研究開発職に就くことができたものの、その道のりは決して順風満帆とまではいきませんでした。人とのつながりや組織の一体感を大切にする考えは、この頃から自分の中に根付いていたのだと思います。今、社労士として働く上でも大きな礎となっているこの経験を、当時のエピソードとともにお話しします。

学生時代の自分と研究開発職への希望

理系の大学院まで進学していたため、漠然と研究開発職への希望を持っていました。しかし正直なところ、大学・大学院時代は友人と遊ぶことの方が楽しくて、勉強に全力投球していたわけではありませんでした。就職氷河期でもありましたし、「受かればどこへ、どんな職種でも}という気持ちもありました。今思えば、ちょっと恥ずかしい話ですが、「世間知らずの箱入り息子」だったような気もします。

そんな自分も、大学生時代に一人暮らしを始めたことで少しずつ変わっていきました。友人たちとスポーツをしたり、宴会を開いたりと、人との交流を深める中で、ようやく「人間らしさ」を身につけていったように思います。本当に金銭的にも精神的にも援助してくれた両親への感謝は絶えません。
社会に出て働くことへの不安もありましたが、研究開発職としてスタートを切ったあの頃の気持ちは、今でも鮮明に覚えています。

尊敬できる上司と先輩との出会い

研究所に配属されて最初に出会った上司は、野球やゴルフを楽しむスポーツ好きな方でした。発想力も素晴らしく、研究者としてだけでなく人間的にも尊敬できる上司でした。社会人として何を大切にすべきか、多くのことを学ばせてもらいました。

また、年齢が近く、同じ大学出身の先輩にも大変お世話になりました。その先輩とはよく二人で食事に行き、つくばにある大衆居酒屋「くぼや」で「とりあえず3点盛りE」というメニューを頼むのが定番でした。メンチカツやフライドポテトなど、当時の若かりし自分たちには最高のメニューでした。先輩は本当に私をかわいがってくれ、「後輩を大切にする」という考えはその先輩から教わりました。

さらに、当時組合の支部長だった一回り年上の先輩にも非常にかわいがっていただきました。その先輩は後に富良野工場に転勤した私たちのところまでまで遊びに来てくれ、夫婦揃って本当にお世話になりました。こうしたつながりは、職場を超えた大切な財産です。

また、同じ大学出身の一回り年上の上司からは、「研究開発のなんたるか」を教わりました。その上司の言葉で今でも心に残っているのが、「俺たちだけはウソをついちゃなんねーんだよ」という言葉です。この言葉は、研究における誠実さと信頼の重要性を教えてくれ、今も私の中でしっかりと根付いています。

就職氷河期と後輩たちとの絆

私が入社したのは就職氷河期の真っ只中でした。上には2年、下には3年もの間、新たな配属がない状況が続きました。だからこそ、後輩が初めて研究所に配属されてきたときは本当に嬉しかったのを覚えています。

その後輩たちはお調子者の部分もありましたが、とても素直で真面目で、まさに同志のような存在でした。研究所をより良くするため、一緒に奮闘した日々は今でも大切な思い出です。仕事を通じて深まった絆は、単なる職場の同僚を超えた、人生の財産と言えるものになりました。

研究所の激動期と一体感作りの挑戦

入社してしばらくすると、会社の統合が決まり、研究所も大きな変化の時期を迎えました。研究開発という職務上、お互いに譲れない部分が多く、なかなか一体感を持つことができない状況でした。

そんな中、私はプライベートでのつながりを深めることが組織の一体感を生む鍵になるのではと考えました。そこで取り組んだのが、野球部の拡大です。野球未経験者がほとんどでしたが、ユニフォームを作るなどして形から入ることで、一体感を醸成しようとしました。正直、今振り返れば浅はかな考えだったのかもしれませんが、それでも何かが変わったような気がしました

さらに、部署別の対抗戦やバーベキュー大会も開催し、「マルハニチロという大企業の中で、私たち研究職がどんな貢献ができるのか?」を一緒に考える機会を設けました。後輩たちは、私の無理難題にもよく応えてくれ、本当に感謝しています。

「人を大事にすること」が組織の力になる

思い返せば、「人を大事にすることが組織の力になる」という考え方は、この頃からずっと私の中にあったように思います。どれだけ優れたスキルや知識があっても、人との信頼関係がなければ組織としての力は発揮されません。研究という一見孤独な仕事であっても、人とのつながりこそが成果を生む原動力だったのです。

その後、私は志半ばで研究所を去ることになりましたが、あの時の経験は今でも私の中で生き続けています。もしまた機会があれば、あの頃の話をもっと詳しくお伝えできればと思います。

最後に

研究所時代の経験は、今の自分にとってかけがえのないものです。人と向き合い、信頼関係を築くことの大切さを学んだあの時間があったからこそ、今、社労士として「人を支える仕事」にやりがいを感じられているのだと思います。

あの時、共に奮闘した上司や先輩、後輩たち、そして一緒に汗を流した野球部の仲間たちに、心から感謝しています。人とのつながりが組織を強くする——その信念を胸に、これからも前に進んでいきたいと思います。

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