就業規則の周知がカギ!トラブルを未然に防ぐためのポイント

はじめに

「会社のルールだから守ってもらうのは当たり前」と思っていませんか?
しかし、就業規則は労働基準監督署に届け出ているだけでは不十分で、従業員に周知されていないと法的な効力を持たない可能性があります。

実際に、就業規則の周知不足が原因で企業側が不利な判決を受けた事例もあります。今回は、具体的な判例をもとに、トラブルを未然に防ぐための対策を解説してみます。

就業規則が周知されていないとどうなる? ー 実際の判例

ケース①:懲戒解雇を無効とした判決(東亜ペイント事件)

【概要】
新しい就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出たものの、労働者への周知を行っていませんでした。
その後、規則に基づいて従業員を懲戒解雇しましたが、従業員が「そのようなルールは知らなかった」と訴訟を起こしました。

【裁判所の判断】
裁判所は「就業規則が労働者に周知されていない以上、その効力を認めることはできない」とし、懲戒解雇は無効とされました。

【ポイント】

  • 企業が就業規則を整備していても、労働者が内容を知らなければ法的な効力を持たない
  • 特に、懲戒処分や退職金減額など、労働者に不利益を与える内容の場合、しっかりした周知がないと適用できない

ケース②:退職金の減額が認められなかった事例(フジ興産事件)

【概要】
就業規則を改定し、「一定の条件を満たさない場合、退職金の減額が可能」とする条項を新たに追加しました。
その後、会社を退職した社員が「新しい退職金規則は知らなかった」と主張し、減額された退職金の支払いを求めました。

【裁判所の判断】
裁判所は「企業が就業規則を適切に周知していなかった」とし、企業側の退職金減額を認めませんでした。

【ポイント】

  • 退職金の規定は従業員にとって重要な内容
  • 変更時には書面や説明会などでしっかり通知しないと無効となる可能性がある

就業規則の周知とは? 法的に認められる方法

では、企業はどのように就業規則を周知すれば、トラブルを防げるのでしょうか?
労働基準法では、次のいずれかの方法で周知することが義務付けられています。

周知が認められる3つの方法

  1. 事業場内の見やすい場所へ掲示・備え付ける  - 例:休憩室や掲示板、社内ポータルサイト
  2. 書面を労働者に交付する  - 例:入社時に冊子を配布、改定時にメール通知
  3. 電子データ(磁気ディスク等)で保管し、労働者が常時閲覧できるようにする  - 例:社内のクラウドストレージや共有フォルダに保存

労働契約法との関係:労働者にとって合理的であることが重要

労働契約法第7条では、合理的な労働条件を定めた就業規則が労働者に周知されていれば、その内容が労働契約の一部になるとされています。

重要なのは「合理性」と「周知」の両方が満たされているかどうか。
特に、以下のような変更は注意が必要です。

労働者に不利益な変更(例:賃金カット、退職金制度の変更)
→ 労働者の同意がないと無効となる可能性が高い

労働時間や休憩時間の変更
→ 曖昧な説明ではなく、具体的な影響を示す必要がある

懲戒規定の強化
→ 「どのような行為が懲戒の対象となるのか」を明確にし、説明会などを実施

企業がトラブルを防ぐための実践ポイント

就業規則を適切な方法で周知する
→ 掲示・配布・電子データを活用し、従業員全員がいつでも確認できるようにする。

就業規則の変更時に説明会を実施する
→ 「なぜ変更するのか」「どのような影響があるのか」を伝える。

労働者代表の意見を聴取する
→ 労働者側の理解を深め、無用なトラブルを防ぐ。

変更履歴を明確にする
→ いつ・どのように変更されたかを記録し、従業員が比較できるようにする。

労働者に対して定期的にリマインドする
→ 変更後も定期的に周知活動を行い、新入社員や異動者にも徹底。

まとめ

就業規則は、企業と労働者双方の権利と義務を明確にするための重要なルールです。しかし、その効力を発揮するためには、適切に周知されていることが大前提。

過去の判例を見ても、「周知不足」が理由で企業側が敗訴するケースは少なくありません。
特に、懲戒処分や退職金制度の変更など、労働者に不利益を与える内容は慎重な対応が求められます。

「会社のルールだから」ではなく、「従業員が理解し納得しているか」を意識し、適切な周知を行いましょう!

※労働トラブルについてなにかございましたらお気軽にご相談してくださいませ。
また、取り上げてほしいトピックなどもコメントなどで教えてもらえると嬉しいです。

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